タイトル
建築の豆知識 2003年11月号

ケイエスケイ設計
http://www.ksk-sekkei.com/

 このコラムでは、住宅を建てるときに参考になるようなことについて述べたいと思います。

 住宅を建てることは、人生で一度か二度しかない大きな仕事です。これから、住宅を建てようと思っている人やリフォームをしようと思っている人が、建築会社やハウスメーカー等の営業マンと打合せをしていく上で、きっとお役に立つ建築の豆知識を隔月で掲載していきます。  今後ともぜひご覧下さい。


耐震設計

1. 地震と耐震設計

 日本が地震国であり、台風の通り道になっていることは、皆さんご存知のことと思います。日本で建物を建てようとする場合、この2つの外力を考えずに建物を建てることはできません。

 日本では、建築物にかかる荷重を、長期荷重と短期荷重にわけて考えています。
 長期荷重とは、建物自体の重さである固定荷重と建物内の家具などの積載荷重のことで、短期荷重とは、地震力、風圧力、積雪荷重のことです。これらの荷重のうち、地震力と風圧力は、建物に対して水平方向にかかる力であり、建物もこの水平力に対して変形しないように設計することになっています。

 大きな被害をもたらした地震の後には、必ず耐震設計の強化につながる建築基準法の改正が実施されてきています。大きな法改正が行われたのが昭和56年で、改正以前に建てられた建物と改正後に建てられた建物では、阪神淡路大震災の時も被害状況が大きく明暗を分けたようです。しかし、だからといって、現在の建築基準法が地震に対して万全かというと、そうでもありません。
 以前は、木造の専用住宅でも、軸組計算を建築申請時に添付して行政のチェックを受けたのですが、現在では、設計者の裁量に任されています。それだけ、設計者の耐震に関する確かな知識が求められるようになったわけですが、設計者によっては、デザインを重視して耐震のことをややおろそかに考える人もいるようです。


2. 木造住宅の耐震設計

 木造住宅で耐震を考える場合、大きくわけて以下の5つのことを考慮する必要があります。

T. 使用木材種と使用場所を考える
 木材の強度は、
  杉、米杉 < 米栂 < ひば、ひのき < くり、なら、けやき < 赤松、黒松 < かし
の順で大きくなります。一般的には、曲げに対して粘り強い松などは梁に使用され、くるいの少ないひのきや杉は柱に、腐りにくいくりは土台に使われています。最近では、接着技術が進歩したため、くるいが少なく強度も大きい木材を張り合わせた集成材が多く使用されるようになってきています。

U. 木材が腐りにくい環境をつくる
 木材は、腐朽菌の繁殖により腐って断面欠損し、強度が低下します。腐朽菌は、適度な温度と湿気のある場所で繁殖するため、浴室まわりの土台、柱は、新築後15年くらいで腐ってしまうことが多いようです。阪神淡路大震災でも、多くの建物が、浴室まわりの土台、柱の腐れにより倒壊したため、その後、壁内に水の回りやすいタイル張りの浴室が減り、壁内に水の回りにくいユニットバスが主流になりました。
 また、断熱材の施工方法のよしあしによっても、壁内結露により柱などの構造材を腐らせることがあるので、注意してください。繊維マット状の断熱材よりも、硬質発泡系の断熱材を使用されたほうが、施工品質が安定していて壁内結露を防ぎやすいです。

V. 耐力壁のバランスを考える
 地震に対して抵抗する壁が耐力壁です。木造在来軸組工法の場合、一般的には長さ90cm以上で筋違が入っている壁が耐力壁になります。
 耐力壁量は、屋根の材料が瓦などの重い材料なのか、スレート板や鋼板などの軽い材料なのかによって変わり、また、建物の面積によっても変わります。この耐力壁の総量は、軸組計算により、耐震上・耐風圧上、十分に耐える量を確保します。
 しかしながら、壁の多い水まわりや北側の外壁に耐力壁が集中し、開口部の多い南側やリビングなどは耐力壁が少ない、バランスがとれていない建物が多く見受けられます。このような建物は、地震地に大きく揺れる部分と揺れない部分ができてしまい、建物がねじれて倒壊することが多いようです。阪神淡路大震災でも、間口方向が狭く奥行きの長い建物で、間口方向に玄関、リビングがあって耐力壁が設けられていなかった建物が多く倒壊しました。

W. 地盤の土質に合った基礎構造にする
 木造住宅に一般的に使われる基礎構造には、布基礎、ベタ基礎、杭基礎があります。
 地盤が、岩盤や礫層などの固い地盤であれば、布基礎でよいのですが、造成地で盛土をした場所や、砂地、あるいは、昔田んぼや沼地であったところでは、基礎構造に注意しなければなりません。特に、砂地では、地震時に地盤が液状化現象を起こし地耐力がなくなってしまうことがあり、ベタ基礎のように重い基礎は不動沈下を起こす可能性が高いため、ベタ基礎は避け杭基礎で施工することをお勧めします。

X. 地盤の固さによる地盤の固有周期を考えた筋違を選択する
 地震の固有周期と建物の固有周期については、設計ではあまり考慮されていないようですが、両方の固有周期が一致すると共振をおこし、建物の揺れが大きくなることがあります。
 固い地盤ではガタガタと揺れ、やわらかい地盤ではユサユサと揺れます。建物も太筋違で耐力壁を設けた場合は、固有周期が短くガタガタと揺れるのに対して、細筋違で耐力壁を設けた場合は、固有周期が長くなりユサユサと揺れます。

 以上のことを参考にしていただいて、耐震設計にお役立てください。


次回12月号は、「家相と方位」を予定しています。ご期待ください。