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建築の豆知識 2004年5月号

ケイエスケイ設計
http://www.ksk-sekkei.com/

 このコラムでは、住宅を建てるときに参考になるようなことについて述べたいと思います。

 住宅を建てることは、人生で一度か二度しかない大きな仕事です。これから、住宅を建てようと思っている人やリフォームをしようと思っている人が、建築会社やハウスメーカー等の営業マンと打合せをしていく上で、きっとお役に立つ建築の豆知識を隔月で掲載していきます。  今後ともぜひご覧下さい。


バリアフリー

1. バリアフリーとは

 建築上のバリアフリーとは、簡単にいうと、建物を使う人にとって障害がなく居心地のよい空間といえるでしょう。またバリアフリーは、段差の解消や手すりの取り付け、室内での温度差の解消などのハードな面と、建物を使う人にとっての使い勝手や緊急時の対応などのソフトな面にわけられます。

 実際に設計を進めていくと、各々の身体状況や生活習慣によって建物や室内空間の使い勝手が異なるために、バリアフリー設計の進め方も千差万別です。たとえば、玄関やトイレに手すりを取り付ける場合に、手すりを必要とする人の障害が、右側なのか左側なのかによって取り付け位置が変わってきます。また、その障害が立ち座りについてなのか移動についてなのかによっても、手すりの形状や太さも異なります。

 ハウスメーカーによっては、段差をなくし手すりを取り付けただけのプランをバリアフリー仕様とうたい広告掲載しているところもありますが、本来の意味でのバリアフリーを考えると、その建物を使う人の身体状況や生活習慣、精神面での状況等をよく観察したうえで、家族の話もよく聞きながら進めていかなければならないのではないでしょうか。

2. バリアフリー設計の基本的な進め方について

  1. 生活動作を中心とした平面計画の整理
    • 住宅内でどんなところに不便や不自由を感じているか、そして何がその原因となっているか、また潜在的に不便・不自由なところがないかなどについてよく把握し、本人や家族とともに解決すべき問題点の優先順位を決める。
    • まず、生活様式を腰掛け座位を主にした洋式にするか、あるいは座位を主にした和式にするかを決定し、それに合わせて家具や住宅設備機器などの種類と形状を検討する。
    • また、これらの家具や住宅設備機器を、高齢者や障害者専用とするのか、あるいは家族と共用するのかを決定し、専用とする場合には、本人が一番使いやすい形状・設置場所とする。共用する場合には、家族も使いやすいように考慮する。
    • 法的条件や予算等を考慮し、本人や家族と決めた解決すべき問題点の優先順位により、バリアフリー設計の対象となる全体面積や予算の調整を行う。

  2. 家具の配置を含めた部屋の広さや形状の検討
    • 全体の平面計画に沿って各室の形状と家具の配置を検討し、必要となる部屋の形状を調整する。

  3. 移動方法の決定
    • 住宅内での移動方法(独歩・つたい歩き・車椅子・床上移動・介助者による抱きかかえ・床走行式リフト・天井走行式リフトなど)によって、廊下や階段、出入り口などの幅員や、床の仕上げ材や構造等が異なってくる。
      たとえば、つたい歩きでは廊下に手すりをつけることが絶対条件になるが、車椅子では廊下に手すりをつけると、移動の障害になることが多い。また、車椅子では、床材をカーペットなどのクッション性のあるものにすると移動の障害になるため、フローリングなどにするが、床上移動では、逆にクッション性のない材料では、床面と接触する部分の痛みなど身体への負担が大きくなる。

  4. 生活空間の整理と部屋のつながりの検討
    • 生活空間は、プライベートスペース、パブリックスペース、衛生設備スペースの3つに大きく分けることができるが、一般的には、プライベートスペースはプライバシー確保のためにパブリックスペースと離して設計することが多い。
      ただ、寝たきりの高齢者や障害者の場合には、少しでも家族との接触を保てるように、あえてプライベートスペースをパブリックスペースに隣接させるなどの考慮が必要となることもある。また、寝室の近くにトイレを配置するなど、衛生設備スペースとのつながりも考慮すべきである。
    • 高齢者と子どもの生活パターンが異なるため、睡眠や休息の妨げとならないように、高齢者の寝室の上には子ども室を配置しない。

  5. 非常時の避難対策
    • 高齢者や障害者の寝室には、通常の出入り口のほかに火災や地震の発生時に直接屋外に避難できる出入り口を設けて、非常時の避難を考慮しておく。

  6. 同一階での段差の解消
    • 玄関の上がり框や和室の敷居、浴室と脱衣室の段差などは解消する。
      段差は、設計上は3mm以内、施工上は5mm以内とし、和室の敷居などにみられる3cm程度の段差はつまずきの原因となるので避ける。また、浴室と脱衣室の段差は10cm程度取ることが多いが、浴室への出入りのときに片足立ちとなって身体が不安定になる上、車椅子では段差を乗り越えられない。浴室からの水返し用にグレーチングを設けて段差をなくすように考慮する。
    • リビングなどに畳床を設ける場合には、45cm程度の段差を設けて車椅子の座面の高さに合わせる。

  7. 便器の選択
    • 便器は、家族との共用なのか本人の専用なのかによって大きく変わってくる。一般的には洋便器とするが、市販の便器の座面の高さは38cm程度あり、高齢者では立ち座りがしづらく使いにくい面がある。専用の便器とするのであれば、高齢者対応型の便器を選ぶが、共用するのであれば、ほかの家族にとっては少し抵抗があるので、便器自体を板などでかさ上げして高さを調整する。

  8. 浴槽の選択
    • 浴槽は半埋め込みとし、洗い場から浴槽のふちまでの高さは40〜45cm程度とするのが、一般的ではある。
      ただし、浴槽のふちをまたいで入るのか、浴槽のふちに腰掛けて入るのかによって、浴槽の高さや形状が変わってくるので、生活動作をよく把握して設計する。

  9. 暖房の選択
    • 温度の急激な変化は、高齢者や障害者にとっては身体的に大きな負担となり、血圧の急激な変化によって心筋梗塞や脳梗塞、脳内出血の原因になりやすい。トイレや浴室を含めた部屋全体が、均一な温度に保たれるように留意する。
      寝室の暖房方式としては、部屋全体を均一に暖めることにより、設定温度をそれほど上げなくても十分な暖かさを感じさせる床暖房が最適である。
    • エアコンなどの対流方式を採用するときには、空気の流れが身体に直接当たらないように取り付け位置を考慮する。

  10. 照明計画
    • 開口部とは反対側の室内奥の壁を明るくして、室内全体が同じ明るさになるように計画し、間接照明を採用してまぶしさを抑える。
    • 階段では、踏み面に人の影ができないように、照明を数ヶ所に分散する。

  11. 色彩計画
    • 高齢者は、白内障などで色の微妙な識別が難しくなるため、壁と扉、廊下の床面と階段の踏み面などに同系色を多用することは避ける。あえて同系色とする場合には明度や彩度、色相を変えて計画する。
    • つやのある塗料は反射がまぶしく、高齢者の目には刺激が強すぎるので、つや消し塗料を採用する。

 以上、バリアフリー設計で考慮しなければならないことについて簡単にご紹介いたしましたが、あくまでも一般論であって、バリアフリー設計では、その建物を使う人の個人的な特性や、その特性についての自覚の度合い、家族とのかかわり方などについて十分に考慮することが前提になると思います。


次回6月号は、「家相のQ.&A.」を予定しています。ご期待ください。